麦わらの誘惑



こちら博多の地では 大濠公園の花菖蒲も見頃を迎え、入梅と共に初夏の到来を告げております

長期予報では本年は梅雨明けも早いとのこと・・・一足先に真夏へと思い馳せる方もいらっしゃることでせふ

そこで、今宵は 前回告知していましたやふに、「いにしへの麦わら帽」をご紹介することに致しませふ、、、




straw hat lady
  



そもそも「麦わら(ストロー)帽」とは 本来は麦わら素材のものにのみ用いられる名称であったのが、

当世では形状が麦わら製帽子風であれば素材に関わらず用いられるようになったやふで

パナマ草を使ったパナマ帽も一種とみなす場合があるほか、近年人気の高いラフィア、い草や経木等

天然素材であつらえたつば広帽子の総称としてこのように呼ばれ、老若男女に親しまれております




今でこそ、所謂「麦わら帽」等は普段使いの帽子の最たるもの、といった位置づけになっておりますけれど、

おおよそ1950年代頃までは 上質なものは男女共に夏の正装にも着用可能であったやふであります


ここで、紳士における夏の二大帽子について チョイとその歴史を紐解いてみますと、、、


カンカン帽・・・・  英語ではボーター(Boater)、フランス語ではキャノチエ(Canotier)と呼ばれる。
水兵や船の漕ぎ手の為に作られた帽子が発祥とされ、たたくとカンカン音がすることから和名がつけられた。
海や川の水しぶきで帽子が柔らかくなって損傷するのを防ぐため、麦藁を平たくつぶして編んだ素材を
プレスで固く成型し、ニスや糊などで塗り固めることにより軽くて耐久性のある帽子となっている。
手頃なものは太くて黄色い麦わら製、高価なのは細くて真白な麦わらが細かく硬く編まれ、一目瞭然だった。
安価なものはひと夏で使い捨てされ、隅田川に一斉に投げるといふ晩夏の風習があったとかなかったとか。

 
パナマ帽・・・  パナマ草の葉を細く裂いた紐で編んで作られる、夏用のつば付き帽。
「1834年にセオドア・ルーズヴェルトがパナマ運河を訪問したときから一般に広まった」とされている。
柔らかいものは「クラッシャブル」と呼ばれ、折り畳んでバッグなどに入れて持ち運ぶことが可能である。
戦前では紳士用の正装としてカンカン帽と共に夏に愛用され、黒いリボンのものは最正装とされた。
(以上、「Wikipedia」等より一部抜粋)




boater hat_400



カンカン帽のリボンの太さからタイ使いから髭のシルエットに至るまで、三者三様の洒落者振りは見事!
つばの広さやクラウンの高さは数種類 背格好に応じて選ぶのが往時の紳士の慣わしであったさふな、
ご婦人と違い、紳士の真のお洒落は細部に至り 自己満足的要素が強いものであるのがうかがい知れます


では、当方の品より 二点ほど紳士物をご紹介致しませふ、、、



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先ずはこちら、、 茶色のリボンがシックな趣の 中折れ型パナマ帽であります
頭周りが58cmと少々小ぶりですので、頭のハチが小さい殿方 もしくは男性的趣向を好むご婦人に如何でせふ
白茶のコンビ靴とあわせ往年のギャングスタアを気取るもよし、白シャツと用いれば良家の坊ちゃんにも変身!



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こちらは、我が日本の誇る老舗メイカー:FUJI HATの 箱付きパナマ帽です
細かく真白き地に黒リボン、、、 これこそまさに 上質な夏の正装帽と言えませふ
麻の白き三つ揃えに白パナマ といった当世では珍しくなった出で立ちも、戦前活動写真の中ではお馴染み
こちらもかなり小さめ、ヤアヤア我こそは・・・ といった頭の小さき殿方は是非挑戦なさって下さいマセ





お洒落の決まり事が多く、限られた型の中で個性を競ったいにしへの紳士たちに比べ、

第一次大戦以降のご婦人方のお洒落のルールは徐々に緩やかになり 麦わらも例外ではなかったやふ


夏季の短い欧州に比べ、州により年中温暖な気候の亜米利加では麦わら帽は必ずしも真夏向けとは限らず、
 
かつては彩色され果実や花を盛られたりと 亜米利加らしいオーバー気味さが愉しい帽子があふれました

一方、欧州で見かけるのは どちらかといふと黒、生成り地の麦わらなどシックな趣向が主流であったやふ

いずれにせよ、1950年代頃迄のものは テイラーネームが付けられたものも多く 箱も共に残っていたり 

中には麦わらとフェルトなど、素材違い同型をオーダーで誂えるといった 持ち主の美意識が覗えるものも・・・


さて、ここからは 仏蘭西もの中心に ご婦人向けの麦わら帽をズズズイッとご紹介致しませふ・・・



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先日「戯れ言」で綴った乱歩先生描く 賊の第一毒牙にかかる美しいモガも大概こんな釣鐘帽を被っており・・・
等と縁起でもないことを失礼致しましたが、20年代当時もので状態もよく 被れる寸法のは滅多にないもの
亜米利加ナイズドされる前の アール・デコ発祥地:仏蘭西らしい、シックな直線美が感じとれます
立体的にかたどられた細かい目の麦わらに、白黒リボンの対比が思わずうっとりするほど、、、
 


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こちらはおそらく1930年代頃のもの・・・ ひさし周りとリボンに針金入り、自在に形を変えられます
艶のある細かい黒麦わらにサテンの黒リボン、同色でも異素材を用いるセンスに妙を感じさせます
顔周りに生まれるひさしの波の生む陰影が、日差しの洪水の中でも涼やかさをもたらしませふ



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同じく細目の黒麦わらでも、こちらはニュウヨークは「Andrea Fashions」といふテイラーメイドもの
30年代後半より40年代にかけて流行した「パンケーキ」と言われる平たく薄い帽子の麦わら版であり、
ゴムを後頭部に引っ掛けて安定させ、前下がりに被る姿が何とも小粋でありますネエ・・・
一見縞のリボンに見えますが、麦わらを四色縦に配しベルト状に巻きつけるといふ 凝った仕事ぶり



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こちらは再び仏蘭西より 深みのある飴色が何ともいえず美しい1930年代の麦わら帽であります
クラウン部分は実際の頭周りよりも小さいことから、こちらも前下がりに被る浅い形状のものです
二ミリに満たない細麦わらをぐるぐる気の遠くなるほど巻いた丁寧な仕上がりに臙脂サテンリボン、
およそ100年も経過したとは思えないほど 年輪を思わせるやふな味わい深い巻きに魅了されます



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お次はこちら、40年代後半くらいのものか 珍しい臙脂の細出の巻きが艶やかな麦わら帽・・・
「ODETTE AUBERGER」といふ、巴里はサントノレ通りにあったテイラーメイドのもののやふ
買付けで通ったことのある通り沿いにあったお店、といふだけで 途端に親しみが湧くから不思議なもの
ディオール初の戦後ニュウルックすたゐる好きな方にはもってこいの、まさに淑女の為の「くれない色」



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続きましては少々変り種のこちら、わたくしも好きな「ターバン型」に近い 頭にピタリと添う形状の麦わら帽
裏を見るに、手まつりの部分もあり おそらく1930年代初めのハンドメイドのやふに思われます
生成りに桃色や緑の混ざった5ミリ程度の麦わらをクルクル巻き、なんともお茶目な帽子が出来上がったもの
『ギター弾きの恋』のハッティが劇中ずっと被っていた帽子のやふに 気取らない愛らしさがあります  


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最後はこちら、、 ジャクリーヌ・ケネディのお洒落が世界を席巻していた 1960年代頃の麦わら帽、、、
巻きや編みは随分太くなってきておれど、二種類の編み方を組み合わせた趣向が面白く 爽やかな印象
さくらんぼやお花のブローチ等と共に、ストライプのブラウスとあわせて思わずお出かけしたくなります 




上質なる品は、真珠でも何でも「巻きと照りが美しい」と申しますが 帽子においてもそれは間違いないやふで

当世では 夏目漱石先生お一人で釣りのくるやふな、お手頃な麦わら帽子も巷にあふれて御座いますが、

細かい仕事のされた品は、デパアトメントのお帽子売り場でも大概 「値引き除外品」として鎮座しています

たかが麦わら帽、と思われがちですが 精巧な麦わら帽子を作れる職人さんは年々減少しているのが現実



流行のものを手に入れて とっかえひっかえする面白みも勿論ありませふし、

末永く愛用できる良きものを吟味し 毎夏の密かなる愉しみとするのもまた 「心の贅沢」と言えませふ




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