見目麗しき脇役たち




突然では御座いますが、皆様は捨てられる方 捨てられない方、はたまた捨てない方…どちらでありませふか、、

と申しましても、色恋のお話では御座いませんで・・・ 本日は包み紙やら容器やらパッケイジのお話であります


と言いますのも、先日のお里帰りの際 店仕舞いなさるといふ近所の刃物砥ぎ店に立ち寄ったのが事の発端…

年をとり目を悪くしたからもう砥げないんですよ、と寂しさふに笑ふ初老の店主さんに品定めして頂いて、

わたくしや父母は 裁断はさみやら文化包丁やら、砥石やらを買い求めたのであります

熟練の職人さんお勧めの品々ですから、切れ味の確かさは無論間違いないのですが、

「中身」に負けず劣らずいい仕事でありましたのが、それらを包み守って居る「箱」の持つ存在感で御座いました


店頭で数十年、店主の仕事ぶりを物言わず見守ってきたであらふそれらは ぽっと出の新製品たちにはない、

何とも形容し難い渋い色合いにどこか懐かしき字体にて、チョイと手にとっておくれよ と訴えかける力があり

中身なき今も、何処となくわたくしは心惹かれるのであります


また、裁縫が得意であった亡き祖母が嘗て使い そのままわたくしが博多に持参してきた布入れ箱、、、

勇ましい字体にて「本場鳴門海峡 糸わかめ」とあり 躍動感あふれる劇画タッチの渦潮の絵ときましたら、

今にも鳴門の渦に引きずり込まれさふな臨場感があり 何となしに祖母が捨てられず再利用した心持が伝わるやふ

入れ物やら包み紙の美しさに思わず捨てられないもの、皆様もご経験があるのでは御座いませんでせふか





このやふな代表格が、昔の化粧品や薬品、食品などをはじめとしたパッケイジ及び広告であると思われます


1926年より我が国でもラヂオ放送が開始されますが 国民に広く普及するのは暫く後のこと、

ましてや広告媒体として 新聞雑誌などより比重が重くなるのには更に数年を要しますので、

それ以前は商品字体は勿論、「外面(そとづら)」を魅力的にする必然性があったことは推測に難くありません

戦前には新進気鋭の画家:竹久夢二や高畠華宵などを起用し、売り上げを爆発的に伸ばした会社も少なくはなく、

同時に画家たちにとっても自らを世間に知らしめる契機となり、我が国の商業広告の創生期であったと言えませふ



shiseidou1.jpg



さて、ここいらで代表的な老舗である「資生堂」のそれらを見て参ることと致しませふ

その歴史は永く 1872年(明治5年) 日本初の洋風調剤薬局として東京・銀座に「資生堂薬局」創業、

1897年(明治30年)には 化粧品業界へ進出、現存する高等化粧水「オイデルミン」が発売されます

1902年(明治35年)銀座の資生堂薬局内に、日本初ソーダ水とアイスクリームの製造と販売を行う
「ソーダファウンテン」を開設、これが後に資生堂パーラーに発展したさふな   (Wikipediaより一部抜粋)

文明開化に沸く往時の我が国に於いてもなんともマア、ハイカラな会社であった訳ですね

1915年(大正4年)には、トレードマアクとして余りに有名な「花椿」を商標に制定、今日に至ります

 
shiseido_400.jpg


こちらは先述の「オイデルミン」… 何度も変更の後 パッケイジはやや簡素化された感はありますが、
紅い化粧水の色に薔薇のイラスト、臙脂のふたが当世のお化粧品売り場でも艶やかに異彩を放って居ります


shiseido2_400.jpg


こちらは練り白粉…爽やかなパッケイジに「色はしろ、ばら、肉色あり」といふ謳い文句が味わい深ふ御座いますね





上は「御贈答用石鹸」… 当世でこちらを頂いたならば、贈った方の株が急上昇することうけあいなお品
最早、中身の石鹸の良し悪しはさておき 贈答用でなく自宅用に思わず欲しくなって参ります



ヘチマコロン_400


こちらは番外篇… 昭和5年(1930)のヘチマコロンの懸賞応募付広告、、、
日本の応募者だけでなく、選ばれたNO.1女優にも豪華景品が出るといふのですから、何とも豊かな時代ですね

「流行は映画から、文化は映画から、正に映画の時代です。時代の突端を行く皆様に愛用せられるヘチマコロンは映画時代の化粧品です」
と紙面で謳い、欧米の10人の人気女優を選出し、人気投票を実施したのです。No.1に選ばれた女優には、
映画会社を通じて純日本風桐製大鏡台や縮緬のハッピーコートを贈呈。この企画は大きな反響をよび、投票総数は100万を超えました。
 ノーマ・シャラー、メアリー・ピックフォード、ベティ・アマンなど、当時のそうそうたる人気女優の中から、
「日本のモダン淑女、モダン青年」がNo.1選んだのは、ジャネット・ゲイナーです(左上)・・・  (ヘチマコロンHPより)




第二次大戦の足音が近づく1930年代後半になって参りますと、各国一斉に「贅沢は敵」運動が始まりますので、

嗜好品やお化粧品等、大々的に「美」を売り物にすることは憚られるやふになり 広告にも国威発揚が求められます


また、戦後十年経ちますと ラヂオに変わりテレビジョンが一躍時代の寵児となり 徐々に普及するにつれ、

広告の主媒体はコマーシャルへと以降… 目から耳から入る刺激的なキャッチコピーが賑々しく商品を謳いました

一人一台とも言えるパーソナルコンピュータア時代、家から出ずとも品物が玄関先で受け取れるこのご時世では、

パッケイジや広告そのもののデザイン力と言ふより、口コミや広告モデルの人気指数に左右されるやふに思います




このやふに見て参りますと、1930年代半ば頃迄のパッケイジ及び広告の趣向が特に凝らされた背景が感じられ…

この頃パッケイジ素材によく用いられた硝子や セルロイドにベークライト等の合成樹脂の持つ独特の儚さ、

またアールヌーボーからアールデコ期にかけたデザイン性の高さに、香水瓶やら薬瓶・・・   

広告ポスタアに 果てはお菓子のブリキカンに至るまで、世界中に数多くのコレクターが居るのもうなずけます




当世のお化粧品や食品等のパッケイジ及び容器で はたして次世紀まで残りうるものが如何程あるかしらん、

などと考えますと、わたくし含め「エコ」なる品を次々と買い漁り捨てゆく現実に 思わず首を傾げてしまひます


たかがパッケイジ、 されどパッケイジ、、、

(もう一度何かに使いたい) (永く大事に使いたい)… 手に取る人にさふ思わせる丁寧なもの作りといふのが、

本当の意味で地球に優しく 目に心に栄養を与えることに繋がるのでは御座いませんでせふか






次回催しのお誘いもご覧くださいませ…

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