ロオブ・ノワール ~ヴィオネの挑戦~



さて 今宵はRobe noirの第弐夜、 ~ヴィオネの挑戦~ と題してお送りすることと致しませふ
『世界服飾史』『装苑 2009年12月号』他 一部参照





我が国におきましては 「マドレイヌ・ヴィオネ」と耳にしてもハテ?と仰る方が多いことかと存じますけれど、

巴里の装飾芸術美術館では「アーカイブの閲覧申し込みが最も多いデザイナア」、また「バイアスカットの女王」として

アズディン・アライアやジョン・ガリアーノからモオド学生に至るまで、今なほ多大なる影響を与え続けているさふです


 
第一次大戦後 社会進出し自立せんとする「新女性」を自ら体現し打ち出したシャネルに対し、

同時代に巴里オートクチュール界を牽引したヴィオネは「服の構成や造形」といった視点から革新的挑戦に挑みました


デザイン画を描けない一方 類いまれなる天性の手先の器用さを持ったヴィオネは、木製の小さな人形に布をかけ

ピンとはさみで彫刻の如くドレスを創るドレーピングといふ手法により 人々の驚く美しいシルエットを生み出します



vionnet 2



ヴィオネはまた 1910年代後半に開発されたクレープ・ジョーゼットといふ伸縮性の大きいしなやかな素材を用い

布を45度斜めにずらして贅沢に生地を用いる 彼女の代名詞「バイアスカット」を大胆にも全身に取り入れました

それ以前も、バイアスの手法は袖や下着等デザインの一部で用いられることはあったさふでありますが

クレープ優雅な落ち感、バイアスの重なりが生む影や揺れが女性のシルエットを流麗なる線へと変身させます


下左は 1920年代に四角い布四枚のみで作られたクレープ素材の画期的なドレス、
右は 古代ギリシア彫刻を思わせる バイアスによって生まれる陰影が効果的なドレスであります


1939年第二次世界大戦の到来と同時にメゾンが閉鎖されるまで ヴィオネは精力的に新作品を発表し続けるも、

優れたデザイン性ゆへ常に模倣の対象となり コピーを恐れた彼女の作品はとりつかれたやふに複雑化していったさふ



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20年代には世界中から注文殺到の巴里オートクチュール界も、29年ニューヨークに端を発した世界恐慌の余波を受け

注文は激減・・・30年代は、有名メゾンのみならず モオド業界全体が大量の失業者を出した時代でもありました

また20年代の所謂「アール・デコ」的モオドは 都会的で簡素な趣向ゆへ流行し模倣されるも同じ理由で飽きられ始め

1930年代に入ると 20年代には「前時代的」と避けられたレエスやリボン等の装飾も復活、

ローウエストから通常の腰位置に戻り、再び女性らしい曲線を強調したラインの回帰が求められてゆきます

復古調とはいへ、それはかつてのコルセットによる人工的なS字シルエットではなく、あくまで自然なものでした



特徴的な30年代シルエットとして流れるやふなロングドレス、といったイメージがありますがそれは専ら夜用で

日中はより機能的な膝下丈スカートに角ばった肩、といった細長い線で ズボンが女性にも着用されるやふに・・・

また髪は肩前後と再び長めになり巻き髪となってまとめられ トークやベレエ等小さき帽子が斜めに被られました



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26年『VOGUE(米)』誌が余計な装飾を取り払ったシャネルの膝丈黒ドレスを「新時代の女性のユニフォーム」と評し

モダニズムの生んだ機能美としたのに対し、同誌が1925年「アナトミカル(解剖学的)・カット」と評するほど

ヴィオネの作品は斬新かつ革新的な構成によって 女性の身体をもう一枚の皮膚の如く艶やかに包んだのでした





さて、これからご紹介するのもジョーゼットやレーヨンをベースに30年代らしい線の美しさが滲み出ている品々です

過度な派手さはないものの、袖を通した際体つきを華奢に見せる エレガントな工夫に満ちたRobe noirたち、、



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詰まった胸元からハラリと流れるケープ状のドレープ、三段重ねられた裾も優雅なドレス
腰下から生地を立体的に接ぎ合わせることで、身体に添うやふなしなやかさが生まれております
胸元ドレープドレスの詳細はコチラ・・・


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まさに古代ギリシアの女神を思わせる、肩に支えの置かれた深い胸元が印象的であります
肩にはギャザー、背中には無数のだましボタンが・・・ 腰下から縦にパネル状に生地を接ぐことで動きを出したドレス
胸元ギャザードレスの詳細はコチラ・・・


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腰にかけて胸元から寄せられたギャザーに袖内側のダーツが、女性の丸みを柔らかく描き出します
こちらも胸元に多数のボタン、肩には厚手の肩パッド入りで30年代後半~40年代初期の典型的なデザイン
腰ギャザードレスの詳細はコチラ・・・


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表はマット、裏は光沢のあるクレープ地に襟の刺繍が浮き上がる 淑女の為の贅沢なガウンコート・・・
肩は30年代によくみられる形状のパフの寄せ方、ボタンを多数縦に並べる趣向はおそらく流行ったのでありませふ
ガウンの詳細はコチラ・・・





巴里オートクチュール界全盛期、同時代に君臨した女王たちの成功へのアプローチ方法が異なることも興味深けれど

いずれも当世 わたくし達が何気なく袖を通す洋服の原型をかたどっていることは間違いありません

蝶よ、花よと移り気で 好奇心旺盛な女性の洒落心の背景には常に、世相が見えない影を落としていると申せませふ

時代を象徴するデザインの中に 往時の女性たちの想いもまた見え隠れして、、、



さて、次回は最終回:~ディオール以降~と題し、戦後のモオドの担い手をご紹介したく存じます




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